カムパネルラの「ぬれたようにまっ黒な上着」
カムパネルラ君にとって、大事な大事な上着が完成しました。

「ぬれたようにまっ黒な上着」という描写だけ、カムパネルラの衣装について、宮沢賢治が記しているのです。真っ黒なリネンを使って、テーラードカラーのジャケットを作りました。
手縫いのボタンホールと、チェコガラスの黒いボタン。

裏地はとってもモダンレトロな、カラフルな絹の生地で、銀河鉄道の色とりどりのシグナルみたい。

それでは、カムパネルラに着せてみましょう。

「銀河鉄道の夜」のお話の中で、宮沢賢治はカムパネルラについてとてもシンプルに描写しています。背の高い少年であること、そして「ぬれたように真っ黒な上着」を着ていること。
~すぐ前の席に、ぬれたようにまっ黒な上着を着た、せいの高い子供が、窓から頭を出して外を見ているのに気が付きました。そしてそのこどもの肩のあたりが、どうも見たことのあるような気がして、そう思うと、もうどうしても誰だかわかりたくて、たまらなくなりました。いきなりこっちも窓から顔を出そうとしたとき、俄かにその子供が頭を引っ込めて、こっちを見ました。 それはカムパネルラだったのです。~(「銀河鉄道の夜」宮沢賢治・・・より。)








ジョバンニはお話の冒頭で、そのころとても苦労をしているこどもであることが語られています。
父親は遠く外国へ漁をしに出稼ぎに行っている留守中で、母親は病の床にあります。
そして、ジョバンニは生活を支えるために仕事をしながら学校へ通い、意地悪な同級生達にからかわれて、大変寂しく苦しい思いをしています。
その中で、優しいカムパネルラの存在は、まるで暗闇にさす星の光のように、浮き上がってきます。
ジョバンニが、病気で寝ている母親と会話をする中で、カムパネルラ少年とジョバンニ、そしてジョバンニの父親とカムパネルラの父親が仲の良い、信頼しあう友人であることが分かります。
ジョバンニのお母さんも、カムパネルラ少年を信頼しています。
~「お父さんはこの次はおまえにラッコの上着をもってくるといったねえ。」
「みんながぼくにあうとそれを云うよ。ひやかすように云うんだ。」
「おまえに悪口を云うの。」
「うん、けれどもカムパネルラなんか決して云わない。カムパネルラはみんながそんなことを云うときは気の毒そうにしているよ。」
「あの人はうちのお父さんとはちょうどおまえたちのように小さいときからのお友達だったそうだよ。」
「ああだからお父さんはぼくをつれてカムパネルラのうちへもつれて行ったよ。あのころはよかったなあ。ぼくは学校から帰る途中たびたびカムパネルラのうちに寄った。カムパネルラのうちにはアルコールラムプで走る汽車があったんだ。レールを七つ組み合せると円くなってそれに電柱や信号標もついていて信号標のあかりは汽車が通るときだけ青くなるようになっていたんだ。いつかアルコールがなくなったとき石油をつかったら、罐かまがすっかり煤すすけたよ。」
「そうかねえ。」
「いまも毎朝新聞をまわしに行くよ。けれどもいつでも家中まだしぃんとしているからな。」
「早いからねえ。」
「ザウエルという犬がいるよ。しっぽがまるで箒のようだ。ぼくが行くと鼻を鳴らしてついてくるよ。ずうっと町の角までついてくる。もっとついてくることもあるよ。今夜はみんなで烏瓜のあかりを川へながしに行くんだって。きっと犬もついて行くよ。」
「そうだ。今晩は銀河のお祭だねえ。」
「うん。ぼく牛乳をとりながら見てくるよ。」
「ああ行っておいで。川へははいらないでね。」
「ああぼく岸から見るだけなんだ。一時間で行ってくるよ。」
「もっと遊んでおいで。カムパネルラさんと一緒なら心配はないから。」
「ああきっと一緒だよ。お母さん、窓をしめて置こうか。」
「ああ、どうか。もう涼しいからね」
ジョバンニは立って窓をしめお皿やパンの袋を片附かたづけると勢よく靴をはいて「では一時間半で帰ってくるよ。」と云いながら暗い戸口を出ました。~(「銀河鉄道の夜」宮沢賢治・・・より。)
さて、それでは、金具と蝋引きコードが到着するまで、カムパネルラ君はちょっと休息してもらって、今日は粘土をゆるりと練り始めましょう。
by ekadantaya | 2016-01-16 09:38 | Trackback | Comments(0)


